玄米を味わう
〜体の芯から健康を育む生きたコメ〜

黄金色の稲穂がこうべをたれる秋。
新米の美味しい季節になりました。
今回は優れた健康パワーを秘める
「玄米(げんまい)」に注目。
体調を崩しやすい時節を丈夫に乗り切る、
とっておきの情報をお届けします。

“生きているコメ”
 「玄米は体にいい」。このところ、そんな話題をよく耳にします。
 「玄米」とはそもそも、「モミ殻を取っただけの、精白していない米」のことです。胚芽とヌカがそのまま残り、水につければ芽を出す「生きた米」です。
 単に精白の度合いを示し、特定の品種を指すわけではないので、コシヒカリの玄米もあれば、ヒトメボレやアキタコマチの玄米等、いろいろあります。
 これに対しておなじみの白米は、精白によって胚芽とヌカが取り除かれているため、水につけても芽は出ません。放置すればやがて腐敗してしまいます。
 玄米を食べるとはつまり「生きている植物のタネを食べること」と同じ。ごはん茶碗1杯の中の約3000粒の生命力を、すべて体内に取り込むことなのです。
 命を蓄えた米と、そうでない米。同じ米ではあるものの、玄米と白米は根本的に異なるのです。

強力無比の栄養食
 玄米の生命力とはズバリ、豊富な食物繊維とビタミン類、そしてミネラルです。お気付きのように、白米では除去される胚芽とヌカに、健康パワーの大部分が含まれています。昔から「おかずいらず」と言われる玄米は、栄養学的に見てもほぼ完璧。玄米だけ食べていても、栄養バランスが十分に保てるとの説もあります。
 精米技術の進歩で、江戸時代後期から白米が市場に出回るようになりましたが、庶民が主に口にしたのは廉価な玄米です。玄米ごはんに味噌汁、焼き魚、野菜の煮物、漬け物という質素な「一汁三菜」が食の基本でした。それでもガンや糖尿病、心臓・脳疾患等、現代で言う生活習慣病に罹る人はごくまれ。生活習慣病に悩むアメリカが「理想の健康食は元禄時代以前の日本食である」と『マクガバンレポート(※)』('77年)で発表するほど、玄米は健康づくりに優れています。
 味覚的にも白米より香ばしく、食べ応えのある玄米。初めての方はぜひ挑戦して、今よりもっと丈夫な体を作りましょう。

(※)マクガバンレポート
米国の上院特別委員会が全世界の医学・栄養学者を集めて調査・研究した「食事と慢性疾患の関係」に関する報告書。心臓病やガン等の主原因は肉食中心の生活にあるとし、それらを防ぐ理想食は「精白しない殻類(玄米等)・季節の野菜・小魚を主とした日本の伝統食である」と発表しています。

【体の内側から大掃除】
 昔ながらの粗食はシンプルですが、主役の玄米には腸を活発にし便通を促す食物繊維、体内の毒や老廃物を排出するビタミンB群がたっぷり。取り込んだ栄養を効率よくエネルギーに変える働きもあります。脇役の「一汁三菜」はこれらの作用をよりアップ。全体で体の内側から健康を維持します。粗食ではなく、まさに健康の素を摂る「素食」です。
【栄養が燃えず脂肪に】
 現代食はカロリーの面で優秀です。しかし肉や乳製品、油、糖分は体への負担が大。消化吸収に必要なミネラルが足りないため、体がそれを求め、あれもこれもとつい食べ過ぎてしまいます。また栄養をエネルギーとして燃やすビタミン類や食物繊維も不足気味。吸収し切れなかった栄養が脂肪となって溜まり生活習慣病を招きやすくなります。

《栄養過多》
トータル 約1212kcal


【白米ご飯】148kcal
玄米よりカロリーは低いものの、エネルギーに変える力や食物繊維等が不足しています。

【バニラアイス】247kcal
食後のデザートは美味しいものですが、糖分の摂り過ぎは病気の温床に。控えめが肝心です。

【コーンポタージュ】152kcal
ポタージュは生クリーム(乳脂肪)とバターを使うので、思いのほかカロリーが高くなります。

【野菜サラダ】235kcal
高カロリーの要因はドレッシングの油。健康のためには油抜きのタイプがおすすめです。

【チーズハンバーグ】430kcal
単品なら特に問題ありませんが、他の料理との取り合わせにより、カロリー過多になりがちです。

《健康の素》
トータル 約620kcal


【玄米ご飯】151kcal
整腸や浄血、血糖値の正常化等で気になる肥満を防ぎ生活習慣病を撃退。健康と美容のカギです。

【たくあん】6kcal
発酵食品の漬け物には玄米の生命力を引き出し、ムダなく吸収させる力が。粗食の必須品です。

【ネギとワカメの味噌汁】45kcal
味噌の微生物が腸の善玉菌を刺激。玄米と助け合って病気や肥満の原因となる便秘を防ぎます。

【筑前煮】256kcal
ゴボウやレンコン等の煮物は体を温めると共に余分な水分を排出。引き締まった体を作ります。

【焼き魚】162kcal
血をきれいにし、コレステロールを減らす不飽和脂肪酸が豊富。玄米と相乗的に働きます。
※料理は粗食と現代食を示す一例です。カロリーは1人前のおよその数値で、使う素材や量によって変ります。


玄米の健康パワーは歴然!
白米に比べ、食物繊維はなんと3.5倍強、ビタミンB群は3倍強、ミネラルは2倍強に達します。
毎日食べる主食だけに、この差は気になりますね。

〜100gあたりの主な健康パワーの比較〜

◆【選び方】より安全な無農薬玄米を
 玄米はモミ殻を取っただけなので、残留農薬を心配する人も多いはずです。しかし、農薬は根っこから吸収されるため、リスクは白米と同じです。有害物質を追い出す、フィチン酸含有の玄米の方がむしろ安全といえます。有機栽培の無農薬玄米なら、それに越したことはありません。

◆【炊き方】白米より水を多く少し長めに
 栄養のある部分が洗い流されるので、とぐ時はごく簡単に。白米に比べて食感がやや堅いので水を多くして炊きます。

炊飯器
玄米ボタンがある時はその炊き方に従えばOK。なければ白米の1.5〜2倍の水を入れて炊きます。

圧力釜
水の量は白米の1.2倍。フタをして強火にかけ、圧力がかかったら(ピンが上がる、または、おもりが回る)、弱火にして約20分炊き、火を止めます。後は約15分蒸らせば出来上がりです。

普通鍋
水の量は白米の1.5〜2倍。塩を少量入れて1時間以上浸けておきます。フタをして強火で炊き始め、沸騰したら弱火にして約50分炊きます。この間、フタが動かないよう、重しをしておきます。炊き上がったら、約15分蒸らします。
 どの場合も、蒸らし時に日本酒を大さじ1杯ほど、回しがけしてください。適度な水分を保った、芯のないふっくらした仕上がりになります。たとえば、広島産の玄米には広島の地酒を使う等、味にこだわっても面白いでしょう。


◆【食べ方】本物の調味料を使いよく噛む
 調味料は玄米の健康パワーを強める上でとても重要です。特に醤油と味噌は丸大豆を用いた天然醸造の本格派を。無添加の本物の調味料は腸内を有益な菌で満たし玄米の働きを助けます。
 玄米を味わう時はとにかくよく噛んで。噛めば消化酵素のだ液がたくさん出て、臓器の働きも活発になり、栄養がスムーズに吸収されます。

他にもあります! 体にいいおコメ
《発芽玄米 〜柔らかな味の「起きた米」〜》
 玄米を水に浸け、ほんの少し芽を出させたものを発芽玄米といいます。玄米の生命力が目覚めて芽を出していることから「起きた米」とも呼ばれます。健康パワーは玄米とほぼ同じですが、食感はかなり異なります。発芽玄米は芽が出ている分、外の皮が柔らかく、噛む力が弱くなった高齢者や小さな子供、胃の弱い方でも安心していただけます。炊く際の水加減は白米と変わらず、炊飯器で手軽に炊くことができます。
《五穀米 〜栄養豊かで楽しい食感〜》
 米、麦、アワ、キビ、豆(大豆・あずき)の5種類の穀物をブレンドした主食です。キビをヒエに替えたものもあります。ビタミン・ミネラル・食物繊維に富み、タンパク質や脂質も豊富。健康パワーは玄米に劣りません。プチプチした歯ざわりと香ばしさが心地よく、洋風のおかずにも良く合います。インターネット等で入手できます。

子供たちのためにも玄米食を!!
 ここ数年、「キレやすい子供」による暴力事件等、無視できない社会問題が数多く発生しています。自制心、いわゆる我慢強さを失わせる原因の一つといわれるのがファーストフードや清涼飲料水の摂り過ぎ。これらは血糖値の急激な上昇とミネラル不足(とりわけカルシウムや鉄)を招き、情緒を不安定にさせます。
 栄養バランスの著しい偏りは糖尿病ほか、大人同様の生活習慣病をも引き起こし、年々増える傾向にあります。大切な子供たちを守るためにも、玄米食に注目。キレやすさや不摂生からくる病気を未然に防ぐよう努めたいものです。

資料:文部科学省「学校保健統計調査報告書」

《子供の肥満度の出し方》
肥満度(%)=(子供の体重−標準体重)/標準体重

20%未満なら正常、20%以上で肥満、50%以上だと高度肥満と判定される。

※標準体重は、年齢、身長、性別によって算出されています。

参考資料:『オレンジページムック 玄米がおいしい。』


夏場に溜った疲れがどっと出てくる秋こそ、ビタミンB1を含む玄米の出番です。具は滋養強壮に最適の山芋と干しエビ。味噌汁にも肝機能を高め、体内の毒を消すシジミを使い、パワーアップします。大病の引き金になる疲労を一掃しましょう。
山芋と干しエビの炊き込みご飯
■材料(4人分)
玄米 2合
山芋 300g
干しエビ 大さじ2
塩、しょうゆ 各小さじ1
みりん 小さじ2
大さじ1
三つ葉 適宜

■作り方

〜「玄米炊き」機能の炊飯器を使って〜
1. 玄米は洗ってざるにあげる。
2. 山芋は皮をむき、2cm角に切る。
3. 炊飯器に玄米を入れ、目盛りまで水を入れる。大さじ2の水をすくい出し、Aを加えて混ぜ合わせる。
4. 2. と干しエビをのせ、「玄米炊き」で炊く。
5. 炊きあがったらさっくり混ぜ合わせ、器に盛り、三つ葉を添える。
玄米のつくね
■材料(4人分)
玄米ご飯 160g
鶏ミンチ 400g
玉ネギ(みじん切り) 1/2個
山芋(すりおろし) 大さじ3
ピーマン(みじん切り) 1個
ショウガ(みじん切り) 1個
大さじ1
小さじ1/2

酒、みりん、しょうゆ 各大さじ2
砂糖 大さじ1/2
シメジ(小房に分ける) 1パック
人参(型抜きし、ゆでる) 適宜
サラダ油 大さじ2

■作り方

1. ボウルに玄米ご飯、鶏ミンチ、玉ネギ、山芋、ピーマン、ショウガを入れ、よく練り混ぜる。
2. 1. に酒、塩を加えてさらによく練り、12等分して小判型に形を整える。
3. 油を熱したフライパンで2. をこんがり焼き、取り出す。
4. たれの材料をフライパンに入れて少し煮詰め、シメジ、人参と焼いたつくねを入れ、たれにからませ、皿に盛る。




健康は快便から! イヤな便秘とサヨナラするには食物繊維たっぷりの、こんな料理がおすすめです。玄米をはじめ、芋類やゴボウ、コンニャクが停滞している腸の働きを元気にしてくれます。玄米とカレーの相性の良さにも、きっと驚くはずです。
根菜カレー
■材料(4人分)
玄米ご飯 適量
鶏もも肉 2枚
塩、コショウ 各少々
カレー粉 小さじ1
ニンニク(すりおろし) 小さじ1
レンコン(7〜8mm輪切り) 300g
ゴボウ(乱切り) 200g
サツマイモ(乱切り) 1本
里芋(乱切り) 6個
コンニャク(2cm角切り) 1枚
赤唐辛子 1本
ゴマ油、カレー粉 各大さじ2
小麦粉 大さじ4
だし汁 4カップ
しょうゆ、ウスターソース、ケチャップ 各大さじ2

■作り方

1. 鶏肉は一口大に切り、Aをもみこむ。
2. レンコン、ゴボウ、サツマイモは水にさらし、里芋は塩でもんでぬめりを洗いおとす。
3. コンニャクは下ゆでする。
4. 鍋にゴマ油、唐辛子を入れて熱し、1. 2. 3. を炒める。焼き色がついたらカレー粉をふり入れ、よく炒めてなじませる。小麦粉をふり入れ、粉っぽさがなくなるまで炒める。
5. だし汁を加えてよく混ぜ、煮立ったら中火にし、根菜がほぼ半煮えになるまで煮てBを加える。
6. さらに10分くらいコトコト煮込む。
7. ご飯に盛り付ける。




玄米のビタミン類と油分(リノール酸)はイライラを緩和し、ノイローゼを予防します。同じような働きのある、カルシウム入りのイワシ、人参、ひじき、じゃこを食材に、しっとり和風でいただきます。精神の疲れを美味しさで癒してください。
つみれ汁
■材料(4人分)
イワシ(すり身) 300g
人参(せん切り) 1/3本
ゴボウ(ささがき) 1/2本
ショウガ汁 小さじ2
大さじ1
小さじ1/3
小麦粉 大さじ2
大根(短冊切り) 100g
人参(短冊切り) 1/2本
青ネギ(斜小口切り)
だし汁 4カップ
味噌 大さじ4

■作り方

1. ボウルにイワシすり身と人参、ゴボウを入れ、Aを加えて良く練り混ぜる。
2. 鍋にだし汁を入れて強火にかけ、沸騰したら、大根、人参を一口大に丸めて入れる。
3. 野菜が柔らかくなって、つみれに火が通ったら味噌を溶き入れてひと煮し、器に盛る。
4. 青ネギをちらす。
玄米ご飯
ひじきとじゃこの即席ふりかけ
■材料(4人分)
ひじき
(水もどししてあるもの)
100g
じゃこ 30g
白ゴマ 大さじ2
大さじ1
みりん 大さじ1
しょうゆ 大さじ2
ゴマ油 大さじ1

■作り方

1. ジャガイモとモヤシを半量のドレッシングで和えて器に盛る。
2. フライパンに油を熱してひじき、じゃこ、ゴマを炒めAで調味する。
3. 水分がほとんどなくなったらできあがり。

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